30分間のブランコ−20年も前のこと 2002-1-12

北澤邦子

 「ただいまー。ゴメンゴメン、遅くなっちゃって」そう言いながら保育園の門をくぐると、2人の子どもたちが砂場から駆け寄ってきました。「おかあさん、お帰りなさい」と抱きついて離れません。「さぁ早くお家に帰りましょう」。

 その途端思いがけない返事が返ってきました。「イヤ、もっと遊んでからお家へ帰るぅ」。長男が駆け出してゆきました。「わたしもブランコする」。長女も駆け出してゆきます。「ダメッ。お母さん忙しいんだから。お家に帰りますよ!早くしなさい。」「だって、もっと遊びたいんだもん。」2人はますますブランコから離れようとしなくなりました。頭の中では、家に帰ってからの仕事の段取りや今晩の献立を考えながら両手に幾つもの荷物を抱え上げた時、「お母さんもブランコやってごらん。楽しいよー」子どもたちの声が聞こえてきました。

 私はフト幼い頃のことを思い出しました。「夕焼けお空に届きそう」そう言いながら高く、高くブランコを漕いでいた日のことを。「よーし、お母さんもブランコに乗る!2人には負けないぞ。誰が一番高いかな?」。そうやって30分も遊んでいたでしょうか。洗濯物を取り込むことも、夕食のことも、家に持ち帰った仕事のことも、皆すっかり頭から抜け去って久々にすっきりしました。子どもたちも満足してさっさと帰り支度。いつもより調子が良いのです。

 それからは毎日、保育園のお迎えから20-30分は子どもたちと一緒に思い切り遊んで帰るようになりました。「早く、早く」と急かしていた時、子どもたちはグズグズとして言う事を聞かず、私自身はイライラ・セカセカ。この20・30分の子どもたちとの時間は親子の関係を滑らかにしてくれましたし、また何よりも私を仕事モードから家庭モードに切り替えてくれる大事な時間となりました。

 20年も前のことですが、時々フッと思い出します。